雑感にも書いたとおり、たまたま先週、Liza Klaussmann の "Tigers in Red Weather" を読んだばかりだったので、本書の展開はだいたい予想がついた。途中まで「独立性の強いエピソードがつづいていると思われる」けれど、「これまた結局、やっぱり長編ということになるかもしれない」。
で実際そうなったわけだが、文芸エンタメ路線だった "Tigers in Red Weather" にたいし、こちらは、より文学性の高い作品に仕上がっている。主人公「ハッティーの苦渋に満ちた人生」を中心に、「貧困、人種差別、家族同士の確執、犠牲と忍耐」などがえがかれ、「とりわけ、親子の絆にからんだ悲痛な物語に胸をえぐられる」からだ。
思わず目頭が熱くなったのは第10章。Hattie の娘 Bell が主役で、なんと母親の愛人と関係してしまう。キワモノのような設定だが、まさかこんなに感動的な結末が待っていようとは思いもよらなかった。
最終章もいい。ここでも Hattie の家族は試練に立たされるが、最後に牧師が出てきて、けっこう心に響く説教をするので、シャンシャンと手を打つ話かと思ったら、なんのなんの。「受苦」という言葉の意味をじっくりかみしめることになった。
「家族をもうけることの厳しさを改めて思い知らされ」る作品だとレビューに書いたが、これを読めばきっと、だれでも自分の家族生活の歴史をふりかえることだろう。山あり谷ありだが、とくに谷のほうがよみがえってくる。しかしどの家族にも「根底には深い愛情が流れ」ているはずだ。
……などなど、ラチもないことをいろいろ考えてしまった。年ですなあ。