ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Elizabth Strout の "My Name Is Lucy Barton" (3)

 北海道旅行5日目。札幌のホテルでこれを書いている。
 きょうは夕刻、小樽まで足を伸ばし、まず船見坂へ。次いで、今は廃校になっている某中学校(立入禁止のため伏字)、手宮西小学校の裏山、最後は定番の運河という順序で見学した。いずれも大林宣彦監督映画『はるか、ノスタルジィ』のロケ地である。某中学と裏山を訪れるのは2回目だったが、これでたぶん最後だろう。
 さて、"My Name Is Lucy Barton" の続きだが、レビューでは粗筋の紹介をカットした。「物語的な意味での筋書きがほとんどない」からだが、それでも一点だけ補足しておこう。
 主人公が大病を患ったとき、長らく顔を合わせたことのなかった母親が見舞いに訪れ、不眠不休で看病する。"You're never sleeping," I said, trying to sit up. "How can you go every night never sleeping? Mom, it's been two nights!" "Don't worry about me," she said. She added, "I like your doctor. He's watching out for you. .... he's good, he'll see to it that you get better." "I like him too," I said, "I love him." A few minutes later she said, "I'm sorry we had so little money when you kids were growing up. I know it was humiliating." In the dark I felt my face become very warm. "I don't think it mattered," I said. (p.65)
 行間から愛情がにじみ出てくるような会話の一例である。とりわけ、A few minutes later 以下、母親がさりげなく話題を変えるところが泣かせる。
 ほかにもまだ感動的な場面がある。思わず引用しかけた箇所など、たしかウトロの道の駅で読んでいて落涙しそうになり、えらく困ってしまった。身に覚えがある話だったからだ。これ以上書くとネタバレになるのでやめておこう。