ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

David Szalay の “All That Man Is” (2)

 きょうは軽い話。まずオッズ情報だが、本書は第二集団のトップといったところ。ぼくのアンテナに登録している The Mookse and the Gripes を覗くと、本命に挙げているファンもいるが、多数意見ではないようだ。
 そんなのどうでもいい、といつもなら言うところだが、なにしろブッカー賞は文学界最大のお祭りみたいなもの。ああだこうだとケンケンガクガク、いろんな意見を斜め読みしているだけでも楽しい。
 次に作者のこと。ぼくはふだん、作家の経歴や周辺情報にはほとんど興味がないのだが、この David Szalay については年齢を知りたくなった。裏表紙に載っている顔写真を見ると、ずいぶん若い作家のようである。え、こんなに若いのに、こんなに老成した味わいの小説が書けるの、と驚いた。
 が、ネットを検索して納得。1974年生まれということは、今年42才。これならわかる。人生のちょうど中間点だからだ。物心ついてからの経験をふりかえることができるし、死までの流れを漠然とながら見通すこともできる。いわば人生の大きな perspective を持ちうる年齢である。
 想像力と創造力の豊かな男性作家なら、その perspective にもとづいて男の人生、ナイン・ストーリーズを書くことが当然できるはずだ。二つの力も perspective もない男はどうなるか。年を取ったとき、ぼくのように人生を嘆くだけってことになります。ああ。
(写真は、宇和島市明倫橋からながめた神田(じんでん)川。このあたりではボラがよく泳いでいる)