ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Chateau of Secrets" 雑感(5)

 ぼくの連休4日目。代わりばえのしない毎日だ。昼過ぎまで、中島みゆきのアルバムを次々に流しながら〈自宅残業〉。「問題集」に収められている「病院童」はケッサクですな。
 昼食後、シュタイアー盤「ディアベッリ変奏曲」を聴きながら表題作を読んだ。大きな山場はまだ先のようだが、小さな起伏がいくつもあって楽しい。
 相変わらずカット割りは巧妙だが、ほかに本書のすぐれた点を挙げると、人物のキャラが適度に類型的であること。これは文芸エンタメにおいて必須の要素だ。もちろん、いかにも型どおりというのはよくないが、気にならない程度のパターンであれば大いにけっこう。
 内面を掘り下げるに越したことはないにしても、度が過ぎてストーリーの流れをとどこおらせるようだと、エンタテインメントとしては失格だ。ほどよく割り切った心理描写のほうが読みやすい。その点、作者の Melanie Dobson はツボをよく心得ている。
 それから、ヒロインが危険や困難に遭遇すること。パターンどおりだが、これがないとエンタメにならない。しかも本書の場合、現代と過去に分かれてヒロインが二人いる。当然、おもしろくないわけがない。
 シュタイアー盤がとてもよかったので、散歩のあと、手持ちのほかの盤で最初のほうだけ「ディアベッリ」を聴きくらべてみた。アラウ、グルダバックハウスブレンデル、どれもいい。どれも最後まで聴きたくなってしまう。
 中でも、意外にと言っては失礼だがブレンデルがよかった。が、たぶん、いつも手が伸びそうなのはグルダかな。例によって快調そのものだ。いまCDラックを見ると、さらにウゴルスキー、プルーデルマッハー、ポリーニも持っていた。あしたにでも聴いてみよう。
 夕食中に見た映画は、きのうが「インテリア」。荒涼たる海と、アップでとらえた女たちの表情が印象にのこる。前回見たウディ・アレンの作品「マジック・イン・ムーンライト」とはまったく対照的で、ほんとに芸域の広い監督だ。
 きょうは「心中天網島」を見た。"Chateau of Secrets" とはべつの意味でカット割りがうまい。話術ではなく、映像技術で場面をつなぐ motion picture そのものだ。
 さて、このあと『すべて真夜中の恋人たち』を少しだけ読んでから寝るとしよう。
(写真は、宇和島市神田川原(じんでんがわら)の元長屋付近の街並み。昔のままではないが、似たような雰囲気だけはのこっている)