ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Solo”雑感(1)

 夕刻、出張から帰ってきた。さっそく、昨日発表された今年のブッカー賞のロングリストを検索してビックリ。なんと、去年の英連邦作家賞(Commonwealth Writers' Prize)受賞作、Christos Tsiolkas の "The Slap" がノミネートされているではないか。今年になってやっとペイパーバック化されたことを知り、ぼくはたまたま入手していたが、周知のとおり、今年の同賞受賞作、Rana Dasgupta の "Solo" もやはりペイパーバック版が出ている。どうせなら最新のものを、と思って出張から帰る途中、たまたま本書を読みはじめたところへ上のニュース。今すぐにでも "The Slap" のほうに取りかかりたいくらいだ。
 とはいえ、今日は本来、Paulette Jiles の "The Color of Lightning" について続きを書くか、昨日読みおえた Gerbrand Bakker の "The Twin" のレビューをまとめるべき日。…と思ったが、いずれにしろ、まだ出張ボケで頭が働かない。そこでまず、簡単に "Solo" の感想を述べておこう。
 ジャンルは伝記物だ。ブルガリアの首都ソフィアに住む百歳近い盲目の老人 Ulrich が主人公で、幼いころからの人生を回想する。オスマン=トルコ帝国から独立してさほど年月のたたないブルガリア、わりと裕福な家庭に生まれ、少年時代、ヴァイオリンに夢中になるものの、芸術なんぞ身の破滅の元と決めつける父親は、せっかく母親が買い与えたヴァイオリンを火に投じてしまう。
 …といったあたりから、だんだん目が離せなくなってきた。Ulrich は親友の父親の影響で化学に関心をもち、ベルリンの大学に留学。が、家計が逼迫してやむなく帰国したところ、その友人は革命運動を続けるうちに逮捕され処刑。…いけない、この調子で各エピソードを拾っていっても切りがない。おまけに、そもそもクイクイ読める小説というだけで、まだ創作の意図もつかめない。明日からまた、もっとボケを直して取り組むことにしよう。