いやあ、ホントに驚きました! ぼくはてっきり最後の最後まで、この「ホラー小説、破滅テーマのSF、冒険小説」がいつか、「タフでハードな少女戦士の精神的な成長を描いた青春小説」に様変わりするものとばかり思っていたのだが、「まさかこんな結末が待っているとは…」。
まったく読みが浅かったとしか言いようがなく、まことにお恥ずかしい次第。でもまあ、裏表紙を今ながめると、たしかに 'shocking conclusion' と書いてある。お決まりの宣伝文句だが、本書に関しては真実そのものです。ぼくほど勘が鈍くなくても、見事に裏をかかれる読者が多いのではないだろうか。
唯一の救いは、予想外の結末ながら、「きっと何か、単なるホラー小説を超えた要素があるにちがいない」と思って読みはじめた当初の期待どおり、いや、それ以上に感動的な作品だったことである。それゆえ本当は、どんな点に感銘を受けたのか詳しく書きたいところだが、ネタばらしになりそうなので書けない。「戦士としての少女の凄まじい人生は、ただ凄まじいだけでなく、じつは人間の尊厳を守ろうとする感動的な生き方」である、という昨日のレビューで精いっぱい。「人間の尊厳」をもう少しかみ砕くと、自分の命をも顧みず守るべきものを守る、それが人間の人間たるゆえんだということだ。あ、書きすぎてしまったかな。
一つだけ背景知識を紹介しておこう。タイトルの "The Reapers Are the Angels" はじつは聖書の言葉で、そのことは本書の中でもふれられている。「刈る者は御使(みつかひ)たちなり」というのが文語訳だ(マタイ伝第13章39節)。聖書に詳しければさらに面白く読める作品かもしれないが、ぼくはさっぱり。ともあれ、素養のないぼくでも本書は十分に楽しめ、かつ感動できた。さすがはアレックス賞受賞作だ!