ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To”雑感(1)

 今日はまず、一つだけ "The Reapers Are the Angels" の補足をしておこう。「ゾンビが跳梁する終末の世界にあって…15歳の少女が超人的な戦闘能力を身につけ、襲いかかるゾンビや異様なモンスターを完膚なきまでに撃退」という主筋はまさに映画的。ざっとネットで調べたところ、今のところまだ映画化されていないようだが、近い将来、きっとスクリーンでお目にかかれることだろう。
 ともあれ、"The Reapers...." がとてもよかったので、続いて同じく今年のアレックス賞受賞作の一つ、DC Pierson の "The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To" に取りかかった。たしかシノプシスを斜め読みして何か心に引っかかるものがあったはずだが、"The Reapers ...." と違って、本が手元に届いたときにはすっかり失念。おかげで、知らない作家の知らない作品という、ぼくのいちばん好きなパターンになった。
 で、いざ読みはじめると、最初はしばらく15歳の少年が主人公の青春学園物といったおもむきだ。学校が舞台の小説といえば、去年のブッカー賞候補作で、今年の全米批評家(書評家)協会賞の最終候補作にもなっている Paul Murray の "Skippy Dies" が最近の大収穫。どうしてもあちらと比較せざるをえないが、今のところ本書はいささか落ちる。
 少年は絵が得意で、休み時間も授業中もノートの端っこなどに漫画を落書きしている。それにはストーリーがあって、彼は将来、3部作のSF映画に仕立て上げようという腹づもりだ。それにべつの少年が興味を示し、2人はやがて学校だけでなく家でも一緒に構想を練りはじめる。
 「いささか落ちる」と書いたが、男子生徒と女子生徒のやりとりなどはコミカルで、活き活きとした文体に支えられている。ただ、内容的にはテレビの学園ドラマと大差ない…と思っていたら、ハロウィーンの夜のドタバタ騒動あたりから盛りあがり、今は主人公の友人が表題どおり、自分は生まれたときから「まったく眠れないし、眠らなくてもいい」と告白したところ。これからいよいよ本番のようだ。