ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Karl Marlantes の “Matterhorn”(2)

 ゴールデン・ウィークとは名ばかりで、仕事をまったくしなかったのは結局、今日一日だけ。宮仕えの男はつらいよだが、それでも本書を読みおえることができたので初期の目標は達成。明日から通勤中、分厚い本を持ち歩かなくてもいいと思うとホッとする。
 くだくだしく書いた昨日のレビューらしき駄文をまとめると、これは「反戦でも好戦でもない立場からヴェトナム戦争を…ひとつの人間的現実として冷静にとらえたヒューマン・ドキュメンタリー」である。さらに加えれば、きわめて映画的な展開の作品だ。「ジョーズ」と同じような流れ、と言えばわかりやすいだろう。面白いのは、主人公の少尉が戦闘中、戦場を上空から(ただし頭の中で)俯瞰するくだりがあることで、戦争映画ではおなじみのシーンだが、ぼくは旧ソ連版「戦争と平和」におけるボロジノの会戦を思い出した。
 全編が戦場の小説なので「戦争と平和」の平和篇というわけにはいかないが、本書にも行軍や偵察、塹壕掘り、傷病兵の手術などの「戦闘準備場面」がある。中でも黒人兵と白人兵の対立をはじめ人物関係がじっくり描かれていて、おかげでぼくは途中、「少々飽きてしまった」ほどだが、じつは最後、それがある悲劇的な事件の布石であったことがわかる。最大のハイライト、「マッターホルンの丘」をめぐる攻防が終了したあともまだまだ話が続くので、どうも変だなあと思っていたら、とんでもない後日談が待っていた。これで本書の点数もぐっと高くなった。
 今あちらのサイトを調べると、400人以上の読者がレビューを投稿していて星4つ半。これは相当に高い評価である。面倒くさいので検索はしないが、きっともう映画化が決まっていることだろう。…ほかにもっと書きたいこともあったが、明日からまた仕事なのでのんびりしたい。この続きはまた後日。