Anne Enright の "The Forgotten Waltz" に取りかかった。ご存じ2007年度ブッカー賞受賞作家の最新作である。
ぼくはあのときの受賞作、"The Gathering" にはえらく退屈したほうだが、今回彼女の作品を読んでみようと思ったのは、今年のブッカー賞のロングリストに選ばれそうな本をざっと検索した結果、本書がもうペイパーバックで読めることを発見したからだ。あちらのブロガーたちのあいだでは、Enright をはじめ、Linda Grant や Philip Hensher、Lloyd Jones、Edward St. Aubyn、Alan Hollinghurst、Justin Cartwright など、過去の受賞作家やショートリスト、ロングリスト入りした作家の最新作が注目を集めている。中でも、St. Aubyn の "At Last" の評判がいいようだ。
- 作者: Edward St Aubyn
- 出版社/メーカー: Pan MacMillan
- 発売日: 2011/05/01
- メディア: ペーパーバック
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その点、本書は核になるストーリーが確立されているぶん、焦点がしっかり合っていて読みやすい。主人公は32歳の女 Gina で、舞台はダブリン。夫がいながら、姉の家の隣人、Sean と不倫関係になる。キスシーンを Sean の幼い娘に目撃されたところから始まり、そこにいたるまでの経緯が2人の出会いから回想される。ウィットに富み、切れ味鋭い、活き活きした文体で、Gina の心情が直截に綴られている。こんな力強さは、"The Gathering" には見られなかったものだ。
ただ、ロングリスト入りとなると、ちと厳しいんじゃないでしょうか。単純明快な話だけに深みがない。あくまでも、今のところ、だけど、『アンナ・カレーニナ』ほど分厚くないし、何だか掘り下げようもなさそうな点が気にかかる。でもまあ、これから波乱含みの展開になるはずだから、お手並み拝見といきましょう。