ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Narcopolis” 雑感 (1)

 おとといの晩、久しぶりに飲み会があり、その席でドストエフスキーオーウェルなどの話も出てきて大いに盛り上がった。みんなの話を聞いているうちに、ぼくの根っこの部分にはドストエフスキー体験があったんだな、と実感。じつはたまたま、〈文学の夏シリーズ〉の一環でロシア文学からは、ドストエフスキーの英訳短編集を予定していたところだ。
 が、いつものようにブッカー賞候補作に流れてしまい、なかなか予定を実現できそうにない。ドイツやイタリアの作品も読みたかったのにと思いつつ、Jeet Thayil の "Narcopolis" に取りかかった。William Hill のオッズは16/1で12作中、下から3番目。泡沫候補扱いだが、下馬評の低かった作品が栄冠に輝いたこともあるのでバカにしてはいけない。
 ……と肝に銘じながら読んでいるのだが、これ、序盤はかなり退屈です。ぼくだけかな、と思ってアマゾンUKをチェックしてみたら、最初の4分の1で挫折したというレビューが載っていた。その気持ち、よくわかるなあ。
 舞台はボンベイ。ムンバイと表記されていないので、1980年代ころの話だろうか。ボンベイが本書の主人公という書き出しで、アヘン窟や売春宿がしきりに出てくる。が、その実態が話題の中心というわけでもなさそうで、テーマはまだよくわからない。
 人物の動きもまだ一定方向には流れていない。いちおう売春婦の Dimple が主要人物のひとりのようだが、主人公かどうかは不明。Dimple が雑誌で読んだ Xavier という画家が登場したかと思うと、話は尻切れトンボ。そのあと Dimple は身体の痛みを訴え、アヘン窟の経営者 Lee に診てもらうのだが、やがて今度は Lee の身の上話が始まり、今は Lee の母親の話。といった具合に中心人物が次々に変わり、しかも、べつにおもしろいエピソードがあるわけでもない。そのあたりがイマイチ乗れない最大の理由だが、まあこれ、だんだん盛り上がるのを期待するしかありませんな。