ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Billy Lynn's Long Halftime Walk” 雑感 (2)

 ストレス→痛飲→布団のはねとばし→風邪というワンパターンで、このところ体調がどうもすっきりしない。おかげで本書もミミズの這うようなスピードでしか進んでいないが、きょうは仕事帰りに〈ドトール〉に寄り、なんとか中盤に差しかかってきた。
 そこで思ったのだが、これ、ひょっとすると全米図書賞の大本命かもしれませんな。いつもの星印で示すと、最低でも☆☆☆★★★。今後の展開と結末次第では、さらに★をひとつ追加して☆4つとなるかもしれない。
 むろん気になる点もあるのだが、それは本書の根幹にかかわることなので即断はつつしもう。とりあえず粗筋をまとめておくと、フセイン大統領の死後、イラクの小さな村で反乱軍を鎮圧した Bravo 分隊の19歳の兵士 Billy が主人公。凱旋帰国後、ほかの隊員ともどもブッシュ政権選挙対策として、全米の主な都市を 'Victory Tour' でまわり、イラク戦争大義をPRする「任務」についている。'Victory Tour' って、たしか映画『父親たちの星条旗』にも出てきましたね。
 そのツアーの終点がダラスで、ホテルからテキサス・スタジアムへと向かうリムジンの車内のようすから物語が始まる。感謝祭の日、フットボールの試合に Bravo 分隊が賓客として招かれ、どうやらハーフタイムにおこなわれるショーに参加するらしい。それがタイトルと関係しているようなのだが、まだまだハーフタイムは一向に始まらない。Billy が家族と再会したときの話に戻ったり、試合前に顔を合わせたチアリーダーと意気投合、お熱いシーンとなったり、それからそうそう、Bravo 分隊の活躍を映画化する企画があり、ハリウッドの有名プロデューサーも登場。映画といっても、なんと女優が兵士を演じ、それどころか第二次大戦の話に改変されるかもしれないといった調子で、PRの実況中継とあわせ、全体的に茶番、狂騒劇の様相を呈している。その点からしても、これはイラク戦争アメリカ社会を諷刺した作品のように思える。
 印象にのこったセリフをいくつか引用しながら、もっと具体的に諷刺の意図を探ってみようと思ったが、下手くそな粗筋紹介だけで疲れてしまった。やれやれ。