ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Dear Life” 雑感

 Alice Munro の最新短編集 "Dear Life" をボチボチ読んでいる。ガーディアン紙、パブリシャーズ・ウィークリー誌、アマゾン・カナダでそれぞれ去年のベスト作品に選ばれたものだが、恥ずかしながら、この高名な作家の旧作はすべて未読。積ん読の山を切り崩す前に、いきなり新作に飛びついてしまった。
 たまたま年末に、Tessa Hadley の短編集 "Married Love and Other Stories" を読んだばかりなので、両者の違いがよくわかっておもしろい。Hadley の場合、とにかく「日常茶飯の出来事が淡々とえがかれ」、「劇的な展開は皆無と言っていい」が、最後に各人の「人生の凝縮された瞬間」が訪れる。これにたいして Munro のほうは、ストーリー性が豊かで冒頭からクイクイ読めるのが大きな特色だ。
 題材としては、恋愛物が多いかな。第1話 "To Reach Japan" は手っ取り早く言えば不倫話。詩人である若い妻がパーティーで知りあった男の住むトロントへ行くことになり、'Writing this letter is like putting a note in a bottle― / And hoping / It will reach Japan.' という短い手紙を送る。ところが、彼女はなんと列車の中で行きずりの男と関係。そのあと自分の寝台に戻ってみたら、寝ているはずの幼い娘がいない。サスペンスが一気に高まり、なかなかイケるぞ、とページをめくる手が早くなる。
 ……この調子でもっと紹介しようと思ったが、ここまで書いたところで急に睡魔が襲ってきた。中途半端だがおしまい。