ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jhumpa Lahiri の “The Lowland” (2)

 ロングリストに Jhumpa Lahiri の名前を見つけたとき、えっと誰もが驚いたのではないだろうか。ご存じ "Interpreter of Maladies" (1999) でデビューしたときから、なんとなくアメリカの作家というイメージがあるからだ。
 ……などと長年の文学ファンのようなことを書いてはいけませんな。ぼくの読書歴はたかが知れていて、現代文学に傾斜した2006年以前の作品は読み洩らしが大変多い。Lahiri の場合は、たまたま寡作家なので catch up しやすいだけの話だ。"The Namesake" (2003) も "Unaccustomed Earth" (2008) も出版年には読まなかった。レビューを書いたのは、いままで "Unaccutomed Earth" [☆☆☆☆★] だけだった。
 朗報に意外な思いをした理由はもうひとつある。Lahiri はなんといっても短編作家というイメージが強いからだ。むろん "The Namesake" は長編だが、あれも実際は短編集のおもむきがある作品ではなかったっけ……忘れた。
 ともあれ、5年ぶりの新作で、しかもブッカー賞候補作というからには長編である。いったい、どんな作品なんだろう、と Lahiri のファンなら(ぼくもそうかな?)期待に胸をふくらませるはずだ。
 ……ずいぶん引っぱってますな。これは読みはじめたときから、あれっと首をかしげてしまった。期待したほどではなかったからだ。そして読後の結論は、「旧作と較べるともの足りない」。
 美点についてはレビューでけっこう拾ったつもりである。決してわるい出来ではない。が、たとえば4年前に "Unaccutomed Earth" を読んだときの昂奮がいまだに醒めやらぬのに対し、こちらは1ヵ月もしたら記憶があやふやになりそうな気がする。
 ほら、あの話だよ、と核心部分を聞けば思い出すだろうが、そのネタをいま割っていいものかどうか。不安になったので裏表紙を見ると、やはり差し障りのない程度にしか紹介されていない。……例によって中途半端ですが、仕事が気になるのできょうはこのへんで。