ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Embers" 雑感 (2)

 本書の作者 Sandor Marai(1900 - 1989年)は、wiki によるとハンガリーの作家。ハンガリー語圏では日本人の名前と同じく、名字から先に Marai Sandor(マーライ・シャーンドル)と表記するのだそうだ。
 ハンガリーでは著名な作家だったらしい。反ナチス、反共の立場を取り、亡命先のアメリカで自殺。ハンガリー国外では忘れられた作家だったが、死後に「再発見」。作品がフランス語や英語など多くの外国語に翻訳された結果、「今日では、20世紀ヨーロッパ文学の正典(カノン)の一部と見なされている」という。
 本書はもともと1942年刊。1990年にリプリントが出たあと、2001年に英訳版刊行。そんな本をどうして今ごろ読んでいるかというと、きのうも書いたとおり、故 Kevin 氏が選んだ2014年の年間ベスト作品のひとつだからである。
 今のところ、「20世紀ヨーロッパ文学の正典」とも言えるような傑作かどうかはわからない。まず初め、ちょっとした事件が起こり、そこに登場する人物の性格が回想シーンを通じてじっくり練り上げられる。と同時に、その昔、何やら大事件があったことをほのめかすヒントが小出しに出され、さてじつは、といった展開になっている。わりとよくある伝統的な技法という点では「正典」と言えるかもしれない。
 例によって不得要領の紹介になってしまった。ゆうべ〈自宅残業〉のやりすぎで、きょうは一日中眠かった。いつにもまして頭が働かない。きょうはこのへんで。
(写真は宇和島市浄満寺。ぼくは小学生のとき、ここで初めてお葬式なるものを知った。その何年前になるのだろう、街で見かけた叔母さんの顔がいまだに忘れられない)