ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Bishop's Man" 雑感(1)

 仕事がだいぶ忙しくなってきたが、その合間を縫って Linden MacIntyre の "The Bishop's Man" にボチボチ取りかかった。カナダで最も権威のある文学賞、ギラー賞(The Scotiabank Giller Prize)の昨年の受賞作である。
 ギラー賞といえば、ぼくは去年の8月に Elizabeth Hay の "Late Nights on Air" (07) とJoseph Boyden の "Through Black Spruce" (08) を立て続けに読んでいたく感激。そのあげく、2作とも去年の下半期ベスト3に選んだほどなので、"The Bishop's Man" の受賞のニュースを知ったときからペイパーバック化されるのをずっと待っていた。
 まだほんの少ししか読んでいないので、あとで大恥をかくことになるかもしれないが、これは間違いなく面白い! 最初の数ページ、いや、極論すると冒頭の何行かを読んだだけで、これはイケル!と確信した。こういうことは時々あり、もちろん次第にガックリすることも多いのだが、今回これでもし直感が外れていたら、ぼくもほんとにモーロクしたもんだ、と諦めるしかない。
 主人公は50歳になったばかりの司祭で、カトリック系の小さな大学の学生部長を長らくつとめていたが、司教の命令で田舎町の教区に赴任。若いころはホンジュラスにいたこともあり、そこで何やら大事件に遭遇した様子。詳細はまだ不明だが、女の思い出話もちらっと出てくる。カナダに帰国後は、学生だけでなく他の神父たちの規律係のような仕事をしていて、司教の命を受け、スキャンダルをもみ消す「エクソシスト」との異名をとる。が、正義感が災いしたのか左遷の憂き目に遭い(?)、初めて教区を担当することになるが、そこでまた新たな大事件に巻き込まれてしまったらしい。
 なにしろまだ序盤も序盤、えらく不得要領な紹介になってしまったが、要は、昔も今も何かとてつもない事件があったらしいが、それはいったい何だろう、という興味なのだ。これだけ思わせぶりなヒントを小出しにしているのだもの、読者として期待しないほうがおかしいだろう。
 それに加えて好感がもてるのは、司祭が正直に自分の心情を吐露している点である。女への思い、性欲、感傷、老いの不安…。教区民の中には司祭をデートに誘う未亡人もいて、まあ、これがどんなふうに進展するかはわからないが(何でもない話かもしれない)、とにかく、いつストーリーが「爆発」して、司祭の心がどんなふうに揺れ動くのか楽しみでならない。
 …ああ、それなのに、仕事がまただんだん忙しくなってきた。早いとこ隠居したい!