ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Bishop's Man" 雑感(2)

 前回同様、仕事の合間に読んでいるのでいくらも進んでいないが、これは相変わらず面白い! というか、ますます面白くなってきた。まだ序盤ということで事件らしい事件は何も起きていないが、ここには明らかに「トラブルの匂い」が充ち満ちている。
 当たるも八卦当たらぬも八卦、その強烈な匂いを発しているトラブルの正体を想像すると、ひょっとしたら冒険小説的な性格が強いかもしれない。主人公は海辺の田舎町に赴任したばかりの中年の司祭だが、旧知の船長から小さな船を買い求め、湾内を試運転。なんということもない描写が続くものの、どうもあとで海が冒険の舞台になりそうな気がする。といっても、これはその昔、アリステア・マクリーンなどの海洋冒険小説を読み漁った経験にもとづく願望半分以上の予想。さて、どうなりますか。
 一方、本書にはチラチラと女の影も見える。まだ名前だけだが、司祭がホンジュラスに赴任していた当時知り合った(?)女が何度か登場。司祭は購入した船に、その女にちなんで名前をつけるほど。昔の日記が挿入されながら現在のストーリーが淡々と進む展開だが、そこに何人か新しい女も顔を出す。今しも司祭は孤独な冬を迎えようとしているところ…。ぼくはメロドラマが大好きなので、司祭の前に女が現われるたびに、お、いよいよか、とスケベー根性丸出しで期待してしまう。
 ほかにも、今まで司祭が教会組織内の「エクソシスト」、要はトラブルシューターとして遭遇した事件の回想が混じり、その回想を通じて他の神父との関係や司祭自身の過去が少しずつ明らかにされていく。司祭は聖職者となるとき、私生児だった父親のことを隠したいきさつがあり、それからもちろん、詳細はまだ不明だがホンジュラス時代の事件などを通じて、正義感と同時に屈折した感情の持ち主でもある。その陰翳に富んだ心情を素直に書き綴っている点がすばらしい。ああ、つまらない仕事など放り出して早く先を読みたい!