ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Alone in Berlin” 雑感(4)

 連休が近づいてきてワクワクと言いたいところだが、連休中に家で仕事をしないためには、今のうちにガンバっておかないといけない。ということで、このところずっと「自宅残業」に励んでいる。おかげで読書のほうはサッパリ進まず、しかも、今のペースだと連休中も下手をすると仕事三昧になりそう…。世のサラリーマンはみんな同じ憂き目に遭っているのだろうか。まったくもう、早いとこ隠居したいもんだ!
 閑話休題。前回は、一人息子を戦争で亡くした夫婦がナチスを批判した葉書をベルリン市内のあちこちに放置するという抵抗運動が「ひょっとしたら実話かもしれない」と書いたが、実際に葉書を残すシーンなどの細部はたぶんフィクションだと思う。ただ、そういう抵抗運動そのものは実在したのではないか。華々しいアクション劇なら小説家のお手の物だけど、地味な活動こそ想像の域を超えているような気がするからだ。
 そういう意味では中盤はフィクションそのものだろう。主筋の抵抗運動は続いているものの、中心的な役割を果たしているのは脇役陣で、葉書を配る犯人に仕立てられた小悪党と、ゲシュタポに協力してその小悪党をワナにはめようとする同じく小悪党、そしてやはり保身に汲々とするゲシュタポの inspector(警部?)など。その奸計におちいった小悪党に救いの手を差しのべる婦人も登場するものの、基本的にはワル者同士の狐と狸の化かし合い。今となっては古風な味わいだが、そんなやり取りを面白おかしく鮮やかに描いてこそ真の小説家と言える。その点、Hans Fallada はまったく知らない作家だが、なかなか芸達者ですばらしい。と同時に、こんな作家はもう現代には少なくなったなあ、と思わざるをえない。
 後半に入ってようやく本筋の抵抗運動が焦点となりそうだ。これから大いに盛り上がるはずだが、いかんせん「慢性多忙症」。連休までに読みおえられるかなあ。