今週もけっこうストレスがたまり、昨夜は「ボーン・アルティメイタム」を観ながら痛飲。とはいえ、この映画はかなり面白かった。そのあと「クイーンⅡ」をガンガン鳴らしてからバタンキュー。おかげで先週のような二日酔いもなく、今日は朝から「自宅残業」。午後になってやっと本書に取りかかった。
全体的な印象は前回とさほど変わらない。やはり「どうやらナチズムの本質に迫るものではな」さそうだが、これは思想的、哲学的なアプローチがなされているわけではないという意味で、恐怖や野蛮性という本質は親衛隊員の行動などを通じて十分に伝わってくる。いわば現象としての本質だ。ぼくの好みとしては、その現象をもたらす本質というか、なぜそんな現象が起きるのかという点についても掘り下げてもらいたいところだが、これは今のところそういう小説ではない。
要するにまだ、「第二次大戦初期のベルリンを舞台に、一人息子の戦死にショックを受けた父親がレジスタンス運動に身を投じそう…という主筋を聞いただけで思い浮かぶ想定内のストリーリーのようだ」が、ではつまらないか、というとそんなことはない。あるアパートの住人とその関係者が入れ替わり立ち替わり登場。フランス降伏の報に沸きたつ一家と親衛隊員の息子、逆に迫害を受けるユダヤ人の女性、その部屋に押し入る刹那的な欲望しか頭にない小悪党、女性をかくまう元判事、そして息子が戦死したばかりの夫婦、その息子のフィアンセで地下組織に入っている若い娘など、それぞれ一般市民の生活に即して恐怖の全体主義体制下、戦時下の状況が次第に浮かびあがってくる。
…こう書くと、なんだかステロタイプの人物像のようだが、なにしろ本書が出版されたのは1947年。いち早くひとつの典型を描いた先駆的な作品と言えるかもしれない。ともあれ、ユダヤ人女性を迫害したりかくまったり、「想定内のストーリー」にしてもけっこう面白い。その最たる例が、上記の父親がひとり始めた抵抗運動。たぶん、これがタイトルの "Alone in Berlin" に関係していると思われるのだが、さてどうなるでしょう。