ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Hans Fallada の “Alone in Berlin”(2)

 今日からぼくはいよいよ連休…のはずが、結局、午後になっても「自宅残業」。せっかく新しい本を読もうと思っていたのに、仕事のあとソファでぐっすり寝てしまった。というわけで、今日は昨日の続きを書こう。
 全体的な印象としては、読後も雑感(1)とほとんど変わらない。これは思想的、哲学的に「ナチズムの本質に迫るものではなく」、人間に関して目から鱗が落ちるような真実を提示するものでもない。主筋も、「一人息子の戦死にショックを受けた父親がレジスタンス運動に身を投じ…という主筋を聞いただけで思い浮かぶ想定内のストーリー」で、登場人物も「今となってはステロタイプに近い」。
 とまあ、「これが現代の作品なら、またまた出ましたナチス物、今度の新味は何でしょう、と言いたくなるところ」なのだが、なにしろドイツ語版の発行は1947年。「あとがき」によると、作者は戦後、本書のもとになったゲシュタポのファイルを入手し、24日間で原稿を書き上げたのち、出版を見ずして他界したのだそうだ。それゆえ、テーマ的にも、テーマを支える内容や登場人物という点でも、「実体験にもとづく典型例をいち早く描いたもの」として評価すべきだろう。
 技巧的には雑感で何度も述べたように、「ワル者同士の狐と狸の化かし合い」がケッサクで、これにより小説としての厚みがぐんと増している。しかも、「探偵対犯人という単純な図式にさまざまな利害関係が加わり、戦争と全体主義がもたらす極限状況における人間の醜悪な姿が、時に戯画的なまでにまざまざと浮かびあがる」。単にレジスタンス運動を「いち早く描いた」というだけでなく、この点にこそ本書の真価があるとぼくは思う。
 …ここまで書いて一杯やり、改めてパソコンに向かったものの頭が働かない。今日はおしまい。