ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Legacy”雑感(2)

 やっと2回目の雑感を書いてもいいほど読み進んだ。これは期待どおり、とても面白い! つい先月まで夏以降、ブッカー賞の候補作ばかり読んでいたが、それはほとんどもうペイパーバックで読めるという単純な理由があったからで、ぼくはべつにいつも高踏派、ゲージュツ系統の作品ばかり読んでいるわけではない。たまにはこの "The Legacy" のようなストーリー重視型の小説を読まないと息が詰まってしまう。
 さて、「たぶんゴシック・ロマンスに入るだろう」と第一印象を述べた本書だが、ぼくの勘違いか、それともまだ序盤のせいか、いわゆる「古い館と美女」形式の古典的な展開ではない。その意味では「ルーティン・ワーク」でさえもなく、ますます気に入っている。
 2部構成のうち、20世紀初頭のアメリカ編では、現代編の主人公の曾祖母にあたる女性がニューヨークから夫のいるオクラホマへと向かい、駅に着いてからさらに馬車で牧場を目ざす。このくだり、大平原や川渡り、野宿、コヨーテの遠吠えと、西部劇ファンにはおなじみのシーンの連続で、ぼくの頬はゆるみっぱなし。女性を迎えにきたのもヴィクター・マクラグレンみたいな牧場の使用人で、それならヒロインはやっぱりキャシー・ダウンズがいいでしょうな。ハッピーな新婚生活ぶりも描かれるが、やがて事件が起きるはず。楽しみだ。
 一方、現代編では2009年の冬、ヒロインの孫娘とその姉がイギリスの片田舎にある古い大きな屋敷を訪れる。そこは子供のころ、毎年夏休みを過ごしていた祖母の家で、祖母の死後、居住を条件に姉妹が相続したものだ。従兄や近所の少年も登場する子供時代の思い出がフラッシュバックし、その昔、屋敷で起きた事件がこれから少しずつ明らかにされようとしている。美しく優しいが線の細い姉と、明朗快活で活動家の妹をめぐる人間模様も定番だが面白い。
 以上2つの大きな流れは当然どこかで結びつくはずで、そこにそれぞれ、どんな事件がどうからんでくるのか。好きだなあ、こんな小説。電車やバスの中でも気楽に読めるのがありがたいですね。