ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Legacy”雑感(3)

 ようやく中盤にたどり着いた。が、まだ事件らしい事件は起きていない、と言うか、つまびらかにされていない。つまり、かなりゆっくりしたペースで物語が進行しているわけだが、そのわりに退屈しない。それどころか、ぼくの貴重な読書タイムである通勤途中がとても楽しい。この本はデカサイズをがまんすれば、サラリーマンにはもってこいの作品ですね。
 現代編では2つのミステリが示されつつある。ヒロインの孫娘とその姉は子供のころ、夏休みをイギリスの片田舎にある祖母の屋敷で過ごしていた。で、20年以上も昔の夏、一緒に泊まっていた従兄が突然、謎の失踪をとげる。その事件は姉妹、家族全員の心に深い傷をのこしているのだが、果たして真相は…? それはどうやら、近所に住んでいたジプシーの少年が知っているらしい…。そんな経緯がヒロインの回想を通じて少しずつ示されている。
 もう1つは、姉妹の曾祖母にかんする秘密だ。祖母が亡くなり、相続した屋敷でヒロインが遺品を改めているうちに曾祖母の不思議な写真を発見。それをきっかけに、曾祖母の知られざる過去がこれから明らかにされようとしている。
 100年前の過去編では、ニューヨーク生まれの曾祖母が結婚、夫の牧場のあるオクラホマで暮らしはじめたときの悪戦苦闘ぶりが描かれる。彼女は子供がなかなか出来ず、やきもきしていたところ、身の回りの世話をしているインディアン娘が妊娠。これはもしや…。
 以上、過去と現在がようやく結びつこうとしている定石どおりの展開だが、ぼくのヘタクソな要約からはとても想像できないほど面白い。先の筋書きなど何も考えず、こういう流れに身をまかせたまま電車の中で読み進むのが、ぼくには至福のひとときです。