ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Marriage Plot” 雑感

 今年の全米批評家協会賞候補作、Jeffrey Eugenides の "The Marriage Plot" に取りかかった。著名作家の最新作とあってか、なんと去年10月の発売前から年間ベストにリストアップしているサイトもあったほどで、その後、米アマゾンで月間ベスト、ついで年間ベスト入り。パブリシャーズ・ウィークリー誌やエコノミスト誌などでも年間ベストに選ばれた評判作だが、残念ながらペイパーバックはまだデカサイズ版しか出ていない。今年の4月には廉価版のペイパーバックが出るそうなので、それまで待とうと思っていたところへ上のノミネート。発表は3月ということで仕方なく取り寄せた。
 Jeffrey Eugenides といえば "Middlesex" が有名だが、恥ずかしながらぼくは未読。同書が出た10年前はまだ、古典的な作品の catch up にいそしんでいた。その後、現代文学に傾斜するも読みのこしが多い。古典ももちろんで、たまたまこの "The Marriage Plot" にはトロロープやオースティンなどの作品への言及があるが、そういう原作を読んでいたら本書はもっと興味ぶかく読めるのでは、という気がする。
 まだほんの序盤なので断定はできないが、これ、ひょっとすると賞レースの大本命かも。早くも秀作の予感がしています。何より英語のノリがいい。各人物の行動を描くときはテンポよく、心理にかかわるときは緻密な表現で、会話には適度のユーモアがまじる。
 中身は今のところ学園物で、主人公の女性が名門ブラウン大学の卒業式を迎えた日から始まり、その日にいたるまでの学生生活が少しずつ紹介されている。どれも副筋のような気がするが、主筋に関係なさそうだからといって無駄な部分とは思えず、むしろ作品の肉づけをバンバンしている印象だ。さてどうなりますか。