ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Snowdrops” 雑感

 このところブッカー賞の候補作ばかり読んでいる。本当はほかにもっと読みたい本があるのだが、こうなったらもう、ショートリストに残った未読の2冊を片づけるしかない。ということで、A. D. Miller の "Snowdrops" に取りかかった。
 これ、あちらではベストセラーになっているようだけど、ぼくはロングリストの段階からあまり興味がもてなかった作品だ。モスクワが舞台のスリラー、という記事をちらっと見かけたからで、たしかに裏表紙によると、CWAのゴールドダガー賞のロングリストにも入選したのだとか。ミステリばかり読んでいた昔だったら、さっそく飛びついているところですけどね。でも今はちょっと…。
 そんな偏見が災いしてか、今のところどうもピッチが上がらない。英語は簡単なのだが、文体に個性的な魅力がない。大昔読んだ "Gorky Park" のほうが、よっぽど緻密な書き出しだったような憶えがある。
 当地に長期滞在中のイギリス人弁護士が主人公で、若い娘と出会って恋に落ちる。仕事関係では、FSBとかいうKGBの現代版のような組織に所属し、危険な匂いをぷんぷんさせる男が登場。何やら事件の伏線らしき描写も随所にちりばめられている。
 というわけで、これからたぶん、ぐっと盛り上がるんだろうけど、えっ、これでほんとにブッカー賞の最終候補作なんですか、という気がしてならない。上の人物設定からして、何だか型どおり。でもまあ、ブツクサ言わず楽しみましょう。