きのう水曜日は晩酌デー。ダウンしなければ、第2部 "Two Blows to the Head" の落ち穂拾いをしようと思っていたが、酒量を抑えたものの、やっぱり何も書けなかった。一杯やりながら観た映画『八日目の蝉』に、酔いも手伝ってすっかりハマってしまい、観おわっても頭を切り換えられなかったからである。
恥ずかしながら原作は未読。NHKでドラマ化されていたことも知らなかった。内容も知らなかったが、さすがにタイトルだけは聞き憶えがあった。感想をひと言でいうと、あの〈かりそめの親子〉の別れはとてもつらい。
さて、第2部である。ここで「えんえんと紹介される」 Paul 少年に大きな衝撃を与えた映画とは、まず "The Incredible Shrinking Man" (1957)。邦題は『縮みゆく人間』で、SFファンならご存じ Richard Matheson の小説を映画化したものだ。
ぼくは学生時代から原書を積ん読中だが、粗筋は何かで読んで知っている。だから映画のストーリーを聞かされても、べつにどうということはなかった。Paul 少年の受けたショックはさておき、映画そのものの出来はどうだったのだろうと興味がわき、ぼくがこのブログで点数評価をマネしている故・双葉十三郎氏の『ぼくの採点表』をひもとくと、☆☆(篤志家だけどうぞ)。
2本目も未見だった。"I Am a Fugitive from a Chain Gang" (1932)、邦題は『仮面の米国』で、Mervyn Leroy 監督作品。『哀愁』と『心の旅路』だけ観たことのある監督だが、こちらはフタバさんの評価ではなんと、☆☆☆☆★(ダンゼン優秀)。辛口で知られた同氏としては、最高に近い評価である。
どちらのストーリーを読んでいるときも、ぼくは「やや引っぱりすぎ」じゃないかと思ったが、『仮面の米国』のほうは、結末こそすぐに読めるものの知らない話だったので、フタバさんの評価とは関係なく、けっこうおもしろかった。
2本の映画のどこに少年 Paul Auster が衝撃を受けたのかは読んでのお楽しみ。ふたたび知ったかぶりで少しだけネタを割ると、「オースター文学における人生の不条理というテーマは、このとき芽生えたのかもしれない」。
ぼく自身、タイトルだけなんとなく記憶にあり、数年前、DVDを観て初めて、あ、これが子供のころに観たあの映画だったのかと思い出したのが、松山善三監督の『名もなく貧しく美しく』(1961)。夜中に泥棒が家に忍びこむ場面で、え、と思わず絶句。最後の交通事故で二度絶句。どちらも強烈に心に残っていたのに、それが同じ映画の中の事件だったとまでは憶えていなかった。
その点、Auster の記憶力は、ものすごいとしか言いようがない。平凡な感想ですな。