ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Ian McGuire の “The North Water” (1)

 今年のブッカー賞候補作、Ian McGuire の "The North Water" を読了。さっそくレビューを書いておこう。

The North Water: Longlisted for the Man Booker Prize

The North Water: Longlisted for the Man Booker Prize

[☆☆☆★★] 読み物としては非常におもしろい。冒険小説と犯罪小説の味わいだ。19世紀なかば、イギリスの捕鯨船グリーンランド、バフィン湾に向けて出発。捕鯨シーンはもちろん、船医が軍医だったときに遭遇したセポイの乱当時の戦闘シーン、出航前の港と船内で起きた忌まわしい殺人事件、氷海に閉じ込められた乗組員たちの壮絶なサバイバル劇、さらには捕鯨船をめぐる陰謀など、開巻早々からスリルとサスペンス満点の展開で息をつく間もないほどだ。船医の屈折した心理や、背筋の凍るような殺人鬼の跳梁ぶり、船医とエスキモーとのふれあいなど、人物像や人間関係もしっかり描きこまれている。それゆえ読者を楽しませる作者のサービス精神はすばらしい。が、読んだあと、心に残るものは何もない。文芸エンタテインメントとして割り切って読むべき作品である。
(写真は、宇和島市神田(じんでん)川と、来村(くのむら)川の合流付近。向かって左が神田川、右側が来村川)