ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Colson Whitehead の “The Underground Railroad” (2)

 小川洋子の『海』もなんとか読みおえたが、読了後、あれ、「海」なんて短編あったっけ、と目次を見返したら第1話だった。もう一度ぱらぱら読んでいるうちに内容を思い出した。そうか、この話だったか。
 ぼくの記憶力はそんな程度なので、いちおう分析的に本を読むときは大事なことを忘れないよう、まめにメモを取らないといけない。"The Underground Railroad" のように300ページを超える大作となると、そのメモは通常、B5用紙で3枚くらい。4つ折りにして書き込むので12面に及ぶ。が、今回は大作なのに、たった3面。感度の鈍いぼくのレーダーでは、あまり引っかかるものがなかった。
 だから途中まで、点数は☆☆☆★くらいかな、と思っていたのだが、読後に★を1つオマケした(5点プラス。が、加点してもしなくても、同じく読んでおいていい作品)。当時の黒人奴隷たちが「隷属から自由へいたる道」を実際に希求していたことは、おそらく間違いあるまい。とすれば、この underground railroad というアイデアはなかなか秀逸だぞ、と考え直したからである。
 ただ、ぼくの好みで言うと、どうせならマジック・リアリズムに徹したほうが、もっとすばらしい作品に仕上がったのではないかしらん。同じ奴隷制や逃亡劇の現実を描いたものであっても、そのほうがずっとおもしろく読めたのにと思う。
 しかも、その現実描写にぼくは疑問を感じる点がある。……と、ここまで書いたら急に眠くなってきた。きょうはおしまい。
(写真は、宇和島市三島神社の東側参道。手前の道はその昔、古城山をめぐる堀の一部だったらしい。それが長堀という現在の町名の由来だそうだ)