ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Door" 雑感(1)

 きょうは寒かった。ぼくの住んでいるところは、タクシーの運ちゃんによると「……のチベット」と呼ばれる高台にあり、朝から降りはじめた雪が何センチか積もった。それが坂下では積もらなかったという話だから、さすがチベットだと実感。
 読書のほうもお寒いかぎりだ。まず、寝床の中では小川洋子の『薬指の標本』を読んでいるのだが、取りかかってもう3週間くらい。まだ片付かない。
 とてもおもしろい作品なのに、寒くて布団の中から首を出しながら読んでいるため、すぐに腕が疲れ、毎晩ほんの数ページで寝入ってしまう。日本の現代文学も catch up しようと思い立ったはいいが、3ヵ月で4冊足らずという超スローペースだ。
 一方、通勤中に読んでいるのは、ハンガリーの作家 Magda Szabo の "The Door"。こちらもカタツムリ君のペースだが、同じく決して退屈だからではない。もっか仕事が繁忙期で〈自宅残業〉の毎日。そのため電車やバスに揺られていると、つい眠くなってしまうのだ。
 それでもこれは、非常に密度の高い秀作のような気がする。この夏、Gerbrand Bakker の "The Detour" を注文したときに届いた、「こんな本もオススメ」案内のメールで知り、地味な表紙を目にしてジャケ買い。今ごろやっと読みはじめて気がついたのだが、ニューヨーク・タイムズ紙が選んだ2015年の年間ベスト作品のひとつである。
(写真は、宇和島市立明倫小学校にある、昭和57年(1982)に建立された新校舎落成記念碑。昔も似たような石碑があったと記憶する。「倫」の題字は、故・冨永徹校長先生が書いたもの。冨永先生はとても立派な校長先生だ、と子供心に感じたものだ)