ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Go-Between" 雑感 (1)

 今年は昼間も、というか寝床以外でも日本文学の catch up を、と決心。年末に引き続き、宮下奈津の『遠くの声に耳を澄ませて』を読んでいる。一日一話。まだ終わらない。それどころか目次をながめても、これ、どんな話だっけ、と首をかしげることが多い。これでホントに catch up と言えるのかな。
 さて、きょうは土曜出勤。世間とちがって、ぼくは二連休だ。〈通勤鈍速〉で L. P. Hartley の "The Go-Between"(1953)を読んでいる。とてもおもしろい。
 これはたしか、去年の5月ごろ、Gerbrand Bakker の "The Detour" [☆☆☆★★] をまず発見。続いて Magda Szabo の "The Door" [☆☆☆★★★]、そして本書というアマゾンUSの〈これもオススメ〉つながりで見つけたものだ。"The Detour" 以外はジャケ買いである。
 以来、書棚の〈早く読まねばコーナー〉にずっと鎮座していたのだが、たまたま本書の裏表紙を見ると、"A masterpiece of innocence lost" というガーディアン紙の寸評が載っていた。お、これは、とすぐに飛びついた。ぼくはもっか、「innocence と experience の対立と融合」という問題にとても関心があるからだ。
 L. P. Hartley という名前には見おぼえがあった。ぼくにとっては昔懐かしい、創元推理文庫版『怪奇小説傑作集』で目にしたことがあるからだ。同姓同名の別人でなければ、傑作集2の第1話「ポドロ島」の作者である。
 いま同書の解説を読むと、その作者は1895年生まれ。L. P. Hartley は(1895-1972)ということなので、彼はあのL・P・ハートリィに間違いあるまい。
 「ポドロ島」がどんな話だったかはもちろん失念。ただ、やけにフシギな物語だったことだけは憶えている。当たり前だ、怪奇小説集に収録されているのだから。
 ちなみに、上の傑作集はいまでも怪奇小説の入門書として最適のシリーズだろう。中でも、「モダン・ホラー・テイルズ」を集めた第2巻は、ぼくのいちばんお気に入り。だから L. P. Hartley と聞いてピンと来たわけだ。
 そんな怪奇小説を書いたこともある Hartley が innocence lost もテーマに採り上げていたとは……。ひょっとして超名作? あわてて新潮世界文学辞典を調べると、1953年の主要作品リストには載っていない。そもそもハートリィの項目がない。
 というわけで、この "The Go-Between"、ますます目が離せなくなってきました。
(写真は、前回アップしたコウノさんのご自宅からほど近い、宇和島市神田(じんでん)川。おととしの秋、秋としてはほぼ40年ぶりに帰省した際に撮影。ここでこんな風景を目にしたのは記憶にあるかぎり初めて。思わず見とれてしまった)