ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Kali Fajardo-Anstine の “Sabrina & Corina”(1)

 きのう今年の全米図書賞最終候補作、Kali Fajardo-Anstine の "Sabrina & Corina"(2019)を読了。Fajardo-Anstine はデンヴァー在住の新人作家で、本書は彼女の第一短編集である。さっそくレビューを書いておこう。

SABRINA & CORINA

SABRINA & CORINA

  • 作者:KALI FAJARDO-ANSTINE
  • 出版社/メーカー: One World
  • 発売日: 2019/04/02
  • メディア: ハードカバー
 

 [☆☆☆★] デンヴァーと近郊の町を舞台に、ラテン系の女たちの人生の悲哀と苦悩を描いた11の物語。最初の二話がいい。学校で渡された砂糖の袋で模擬育児に励む女の子が〈乳児〉と別れ、そこへ勝手気ままな母親との別離の悲しみが重なる。表題作では、仲のよかった従妹が絞殺され、その死に化粧をほどこした若い女が、自由奔放ながら心に傷をかかえていた従妹の生前の姿を思い出す。ほかにも肉親や夫、恋人などとの別れ話が続き、浮気性で自堕落な母親が何度か顔を出し、不幸な家庭環境で育った若い娘が喪失を通じて家族の絆を思い知る。似たような人物設定と筋書きで、一気に読むと飽きがくる。また、どの話も途中はまずまずなのだが、最後、主人公の人生を象徴する瞬間のインパクトがやや弱い。その昔、「短編小説は閃光の人生」という秀逸なキャッチコピーがあったが、本書は残念ながら〈閃光度〉がいささか足りない。しかし若い作家だ。今後を期待しよう。

(写真は、愛媛県宇和島市龍華寺にある宇和島藩初代藩主・伊達秀宗の墓。去年の10月撮影)

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