ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Patrick Taylor のことなど(2)

 今日は久しぶりに出張。携帯でこれを書いているのだが、キーの操作がまことに煩わしい。改行など、あとで訂正しなければ。

 さて、Patrick Taylor の "An Irish Country Doctor" はその後も快調で、ますます気に入っている。「赤ひげ」のローカルピース版といったところだろうか。アイルランド紛争の話もちらっと出てくるが、本当にちらっとだけなのでありがたい。

 前々回ふれた奴隷解放戦争における虐殺事件のように重大な問題は、扱うなら真剣に扱ってくれというのがぼくの考えで、いつもそういう問題にしか興味がないわけではない。中途半端な書き方をしたり、どこかの国のノーベル賞作家のように、政治的アジテーションにうつつを抜かしたりする手合いが許せないのだ。

 重要な問題ほど複雑な要素をはらんでいて、完全な正解を得られないことが多い。アジテーションとは、ものごとの一面のみ強調することであり、それは断じて作家の仕事ではない。

 その点、前回書いたように、苦い真実を生涯見つめ続けたオーウェルの知的誠実はじつに見事と言うしかない。ユダヤ人の虐殺を阻止するためにはドイツ人を殺さねばならなかった。オーウェルの著作を読めば、この世にはそういう不快な事実が満ちみちていることに気がつく。

 あるいは、人生の重大事を扱っていなくても、その断片をしっかり、もしくはしみじみと綴っていく。そんな作家が大好きだ。出張先で "An Irish Country Doctor" を読みながら、ふとそんなことを考えた。