ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Lisa Genova の "Still Alice"(2) その他

 今しがたニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストを見たら、週末は第16位(Trade Paperback 部門)。だいぶ下がってきたが健在だ。それにしても、米アマゾンで159人の customers の評価が平均星5つとは恐れ入った。展開と結末が読めるという点で、ぼくはそれほど高い評価はできないが、その欠点を補って余りある感動が得られることもたしかだろう。
 とりわけ、主人公の大学教授が病を押して難病介護の会議でスピーチをする場面。これは本当に感動的だ。それから、教授が指導していた学生がPh.Dを取得して卒業し、教授に感謝の言葉を捧げるくだり。これも泣けた。そして最後の愛のメッセージ。筋書きが分かっちゃいるけど面白い、感動的という小説の好例だろう。
 ところで、昨日書いたレビューを読み返してみると、病名は明かさずに「あの有名な難病」とぼかして書いたのだが、それでも文脈から何の病気か一目瞭然である。それが分かったとたん、本書の「展開と結末は、この病気について一般に知られている事実とタイトルからおおよそ見当がつく」。だからこそ、昨日も今日も病名を伏せているわけだが、アマゾンの紹介記事には堂々と書いてある。米アマゾンもそうだし、おそらくほかの書評もそうだろう。問題の「難病について読者の啓蒙を促す」のが本書のねらいであり、その意味では病名を明示したほうがいいのかもしれないが、読者から小説を読む楽しみを奪わないという観点からすれば、やはり伏せたままにしておくべきではないだろうか。
 話は変わるが、上のリストを見ると、3月に読んだ David Benioff の "City of Thieves" が第3位(詳細は3月12〜15日の日記)http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20090312/p1。これはめっちゃくちゃオモロー!(もう古い)の小説なので順当だろう。
 あと、Linda Grant の "The Clothes on Their Backs" を読んだとき(3月16〜18日)、http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20090316 The clothes you wear are a metamorphosis. They change you from the outside in. という言葉が出てきたので長らく気になっていたが、最近、この「衣装哲学」についてやっと某女史に尋ねる機会に恵まれた。それによると、「今日は勝負!」というときに服をバッチリ決めることは人によってあるかもしれないが、自分は気分によって服装を変えることもしない。まして、「衣服が外側から人間を変える」なんて…とのお言葉。さて実際、世の善男善女と衣服の関係はどうなのだろうか。