1週間以上もあちこち持ち運んでいるせいで、分厚いペイパーバックの背表紙がだいぶ痛んできた。あとまだ、普通の本なみの分量が残っている。はてさて、いつになったら読み終わるのか…。
雑感(6)でも書いたが、とにかくこれは「伝統的なリアリズムに立脚してい」るにもかかわらず「奇怪千万な小説」である。普通の小説では、重要なエピソードには必ず進展があり、それが大きな柱となって物語の推進力を生みだす。ところが本書の場合、まだ途中までしか読んでいないので断定はできないが、明らかにダイグレッションとしか思えないような事件が連続する。話が盛り上がったかと思うと中断し、フォローがない。あとで何か全体を統一するようなテーマに収斂されるのか、それとも、各断片はついに断片のまま終わってしまうのか。もし後者が正しいとするなら、その意味は何か。…そんなことを考えながら読んでいるせいもあって、後半に至るも、いまだに「本書のテーマはおろか、主筋さえも杳としてつかめない」。
第3部は第2.5部と同じく、第1・2部から8年後の話。花屋の主人が店の出資者の邸宅を訪れ、20歳近くも年下の娘に心を奪われる。けっこう面白いが、例によって尻切れトンボ。続いて、元からシェフィールドに住んでいる家族の様子が父親や二人の息子、母親と視点を変えながら報告される。夫人と花屋の関係は結局、一過性のものだったようだ。
…と、少し退屈しながら読んでいると、突然、第1部からの過去の出来事がようやく一つにまとまりそうな雲行きになってきた。第1部ではコミカルに描かれていた夫婦や親子の関係が、当時のエピソードを原因として大きく変化しそうなのだ。しかしこれ、ほんとに本筋なのかなあ。まったくもって先が読めない小説だ。