ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Land of Green Plums" 雑感(2)

 相変わらず超多忙、相変わらず絶不調。おかげでこの本もさっぱり進まず、まるでカタツムリ君になってしまった。
 前回同様、英語そのものはとても簡単なのだが、各エピソード、極端な場合には、ワンセンテンスの具体的な意味さえ判読しにくいことがしばしばある。率直に言ってストーリーもあまり面白くない。が、独裁国家全体主義体制の恐怖と狂気、不条理という内容が内容だけに、この小説を物語性の観点からのみ片づけるのは筋違いだ。評価に際しては、もっとほかの要素を考慮しなければならない。
 ただ、本書が全体主義の根源を哲学的、思想的に掘り下げるものではないことは(たぶん)確かだ。その点、たとえばドストエフスキーの『悪霊』を読んで覚えるような知的興奮は(ぼくの読解力不足が主な原因だとは思うけど)、今のところ残念ながら味わえていない。おかげでつい、睡魔に襲われてしまう。
 また、これはオーウェルの『1984年』のようなアプローチとも違う。密告や監視、強制捜査、尋問などの話も出てくるが、それらを通じて全体主義の恐怖の現実がリアルに迫ってくるというより、むしろ、かなり象徴的な描き方でその異常性、狂気が綴られていることのほうが多い(と思う)。その象徴の意味は、たぶんルーマニアの人たちなら、あるいはチャウシェスク体制に詳しい専門家なら、ああ、あの事件、あの事実を指しているんだな、とピンとくるのではないかという気がする。が、何の知識もないぼくは、きっと異常で狂った社会のことを言いたいんだろうな、と大まかな想像がつく程度。そんなことを考えているうちにまた眠くなってしまう。…はて、後半はどうなるんだろう。