ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“A Gate at the Stairs” 雑感(4)

 今週は昨日締め切りの仕事に追われながら本書をボチボチ読みつづけ、今日でやっと半分過ぎたところ。まるでカタツムリ君だ。
 「ジャンル的には、ローカルピース、青春小説、家庭小説…いろんな要素をはらんだ小説のようだ」と前々回報告した印象はあまり変わらない。雪景色や花の咲き乱れる様子、地方人気質とでもいうのか、地元の人の考え方を紹介したくだりはローカルピースだし、主人公のネクラな娘 Tassie が大学の同じ授業で知り合った青年に恋をするところは青春小説。が、メインは家庭小説なのかな、という気もする。
 主筋は Tassie がいよいよベビーシッターのバイトを始める話で、赤ん坊は依頼主の Sarah 夫婦がもらってきた養子。'A baby destroyed a life and thereby became the very best in it.' (p.121) とか、'The tinier the child, the more you were the servant.' (p.134) といった文言が目にとまり、ぼくの今ではドラ息子、ドラ娘の赤ちゃん時代を思い出した。女性の読者ならなおさら共感できることだろう。
 その赤ん坊は4分の1だったか黒人の血を引く子供。それゆえ人種差別問題も出てくるのだが、赤ん坊が泣きながら Tassie にしがみついたり、その境遇に Tassie が思いを馳せたりする場面はグッと胸に迫るものがあり、いかんいかん、こんなの定石どおりの描写じゃないかと思いながら、つい目頭が熱くなってしまう。本書が今年のオレンジ賞の最有力候補というぼくの勝手な予想が、にわかに現実味を帯びてきたような気もする。
 上記のとおり巻なかば過ぎまで読んだところだが、まだ事件らしい事件は起きていないとも言える。Tassie の恋の行く末(たぶん失恋だろう)ともども、これからどんな展開になるか楽しみだ。Sarah の夫 Edward が何かやらかしそうなのだが…。