ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Remarkable Creatures”雑感(3)

 季節柄、連夜の酒びたりで今日も目覚めが遅く、結局思ったほど進まなかったが、それでも何とか目鼻はついた。これは最初のゆったりしたテンポから想像したような「レトロ感覚、マッタリ感覚」に満ちた小説ではなく、情熱が静かに流れ、時に熱くほとばしるような歴史小説、伝記小説ですね。
 というのも、読んでいるうちにふと気がついてネットを検索したのだが、主人公の女性 Mary Anning (http://en.wikipedia.org/wiki/Mary_Anning)と、その友人 Elizabeth Philpot (http://en.wikipedia.org/wiki/Elizabeth_Philpot)はともに実在の人物である。とりわけ Mary は、イクチオサウルスプレシオサウルスなどの化石の発見で世界的に有名だったらしい。
 Wiki の記事は長くて最初のほうを斜め読みしただけなので、本書がどこまで史実にのっとっているかは定かでないが、ともあれ舞台は19世紀の初頭、英仏海峡に面した小さなリゾート地。Mary はそこの貧しい家に生まれ、幼いころから化石の採集に情熱をそそぎ、集めた化石を旅行者に売って家計を助けている。一方、Elizabeth はロンドンから引っ越してきた中産階級の婦人で、海辺で化石を拾っているうちに Mary と出会い、二人の友情が始まる。
 Mary と Elizabeth が交代で語り手となっているが、実質的な主人公はやはり Mary と言うべきで、赤ん坊のころ雷に打たれて奇跡的に助かったエピソードに始まり、化石の採集中、地滑りであわや命を落としかけたり、当地を訪れた化石のコレクターに恋をしたり、なるほど、これならニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストに載るのも当然だな、と思えるほど面白い物語に仕上がっている。
 …ほんとうはもっと書きたかったが、明日は職場の忘年会。睡眠不足でダウンしないように早く寝なくては。