ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Jaimy Gordon の “Lord of Misrule”(2)

 これは第4章を読みはじめてやっと救われた。それまでぼくにはかなり退屈で、同じ専門外の競馬を描いた小説でも、大昔傾倒したディック・フランシスのほうがはるかに面白かったなあ、とジャンル違いなのについ頭の中で較べながら読んでいた。
 ただ、好きな人には好きな世界の話かもしれない。それに、ここにはいかにもアメリカのローカル・ピースらしい人物が登場し、風景が広がっている。本書が去年、全米図書賞を受賞した理由も、ひょっとしたらアメリカの原点、原風景を活写しているから、ということかもしれない。ただ、それにしても読みにくい英語です。少なくとも、標準的な英語でないことだけは絶対間違いない。
 それから、青年調教師に関してのみ you と話しかけながら場面を進める意図が最後まで汲みとれなかった。ただ単に文体に変化をつけたかっただけなのか、それとも何かもっと深い意味があるのか。雑感でもふれたとおり、まさしく実況中継らしい効果があるのは認めるのだが、なぜ青年調教師に絞ったのかという点がどうも腑に落ちない。
 ただ、第4章は間違いなくいい。これがあるから本書は大傑作というほどではないにしても、まあ佳作くらいにはなっているものと思う。ぼくの好みとしては、Nicole Krauss の "Great House" のほうがゴヒイキなのだが、あちらも小粒でインパクトに欠ける。Karen Tei Yamashita の "I Hotel" に至ってはまったく波長が合わず、途中で挫折。毎度ながら全米図書賞はどうもぼくと相性が悪いようだ。去年はじつは Lionel Schriver の "So Much for That" に期待していたのだが落選。同書の前に、積ん読の旧作から早く片づけようと思っている。