ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Reapers Are the Angels”雑感(1)

 今年のアレックス賞受賞作の一つ、Alden Bell の "The Reapers Are the Angels" に取りかかった。去年のブッカー賞最終候補作でもあった Emma Donoghue の "Room" はすでに読んでいるので http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20100919、これで今年のアレックス賞の受賞作を読むのは2冊目ということになる。
 本書に食指が動いたのは、もちろんペイパーバックであることに加え、シノプシスを斜め読みしたところ、これがどうやらゾンビを扱ったものらしいとわかったからだ。最初は、えっ、ゾンビなんて、と思ったが、ヤングアダルト向けの良書を選定するアレックス賞のことだ。きっと何か、単なるホラー小説を超えた要素があるにちがいない、と興味がわいてきた。
 今日はまだ、やっと第1部を読みおえたばかりなので経過報告にすぎないが、いやはや、これは冒頭からかなりの部分、正真正銘の「ゾンビ小説」です! そんなジャンルがあるのかどうかは知らないが、そうとしか言いようがないほど凄惨なシーンが連続する。大急ぎでネットで検索してみたら、リチャード・マシスンの『アイ・アム・レジェンド』やスティーヴン・キングの『セル』がゾンビ小説なんだとか。マシスンも恐怖の大魔王もその昔、少しかじったことはあるけれど両書とも未読。映画ではかのジョージ・A・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が有名で、ぼくも見たいと思ったことはあるけれど未見。
 というわけで、ホラー小説ファンが読んだら、なんだこの程度かと思うかもしれないが、小心者のぼくは当初、読んでいてゲッとなってしまうこともあった。なにしろ、ここで登場するゾンビは、頭部を破壊しないことには致命傷にならないのですからね。主人公は15歳の少女だが、武術にたけた彼女が襲いかかるゾンビを撃退する場面がどんなものか詳しく書くまでもないだろう。
 おまけにこれは、何年か前に読んだ Cormac McCarthy の "The Road" http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20081013 と同様、破滅テーマのSFと言ってもよく、少女の行く手には廃墟の街、終末の世界が広がっている。生き残った人間たちがゾンビから身を守るべく、各地で小集団を形成。荒くれ男が少女に手を出そうとするなど、映画「マッドマックス」さながらと言っていいくだりもある。
 ただ、第1部の中盤を過ぎたあたりから、「単なるホラー小説を超えた要素」も顔を覗かせるようになり、じつは本番はまだ始まっていないのでは、という気がする。本当はそのあたりを書きたかったのだが、長くなったので今日はもうおしまい。