ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

今年のオレンジ賞

 夕べの特別音楽番組をたまたま少しだけ見たが、久しぶりに聴いた平原綾香の「Jupiter」がとてもよかった。こんな時だからこそ心にしみるのか。大学時代の友人も、「震災にあった人たちのことを思うと文句は言えないが、このバタバタですっかり疲れ果てた」という。首都圏の人々はみんなきっと、大なり小なり同じ思いだろう。
 さて先日、今年のオレンジ賞のロングリストが発表された。この賞は、前年の主要な賞を逃した作品に与えられることが多く、いわば女流作家の「救済賞」的な意味があるのでは、という気がしなくもない。事実、今年も去年のブッカー賞候補作だった Emma Donoghue の "Room" http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20100919 や、全米図書賞の候補作 Nicole Krauss の "Great House" http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20101029 がノミネートされている。このあたりがやはり有力候補作と言えそうだ。
 ともあれ、オレンジ賞に対抗して男性作家のみ対象のバナナ賞でも設けたらどうだ、とぼくは皮肉ったことがあり、去年の8月、ガーディアン紙に載った、"The Orange prize is a sexist prize. .... The Orange prize assumes there is a feminine subject matter – which I don't believe in. It's honourable to believe that – there are fine critics and writers who do – but I don't." という A. S. Byatt のコメントを読んだときは、思わず快哉を叫んだものである。
 というわけで、今の段階ではあまり食指が動かないのだが、今年のリストをながめているうちにふと、去年の受賞作、Barbala Kingsolver の "The Lacuna" を読みもらしていることに気がついた。入手したらなんと600ページを超える大作だったので、時間ができたときに読もうと思っているうちについ後回しになってしまい、その後一度読みかけたものの多忙で挫折。今もべつにヒマなわけではないが、ここで読んでおかないといつ読めるかわからない。
 そう思って取りかかったが、これはやはり大作である。今日はもう、ここまで駄文を綴っただけで疲れてしまったので、最初の雑感はまた後日書こう。オレンジ賞に話題を戻すと、今年の全米批評家(書評家)協会賞を取った Jennifer Egan の "A Visit from the Goon Squad" や、先月 "How to Breathe Underwater" http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20110218 を読んだときから気になっているアメリカのベストセラー、Julie Orringer の "The Invisible Bridge" なども、未読ながら有力候補作のような気がする。