ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“When God Was a Rabbit”雑感(2)

 読んでいるうちにわかったのだが、これは2部構成。第1部は主人公 Elly の少女時代で、第2部はその15年後、Elly は27歳になっている。舞台は最初ロンドンだったが、一家はやがてコーンウォールの海辺の村に引っ越し、民宿を経営。Elly の兄が働いているニューヨークを除けば、あとはもっぱらこの民宿で起きる出来事が中心だ。
 「これから先はシリアス路線になるのかもしれない」と予想したのはまんざら見当違いでもなく、その後両親はヨリを戻したものの、第2部に入るとそれまでのコミカルな調子は一変し、長年民宿を利用してきた客がガンで死ぬなど、暗く重い話が多くなる。が、その中にハートウォーミングなメッセージもこめられていて、これは第1部と変わらない。
 一方、読みがすっかり外れてしまった流れもあり、なぜか Elly にだけ人間の言葉を話せるウサギの God が主筋に深くかかわるものと思っていたら、なんとゴッドくん、あっさり死んでしまった。それがまたまたなんと、キリストなみに復活を遂げる! まことに珍妙な設定だが、今のところ、その意味はまったく不明。第2部にはまだどうも一山ありそうなので、ひょっとしたらそこで明らかになるのかもしれない。
 ことほどさように第1部は支離滅裂に近いエピソードが多かったが、それがけっこう面白い。前回も述べたとおりドタバタ気味のコメディーが中心で、中にはレズ、ゲイ、ロリコンなどの話も混じるものの、語り口はさらりとしたものだ。そこに家族の愛や友情にまつわるハートウォーミングな出来事も起こる。
 その「支離滅裂に近いエピソード」が布石となって、第2部の「シリアス路線」へと流れていく構成がうまい。が、もうネタばらしはできない。さて最後、どうなるんでしょうか。