ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Sarah Winman の “When God Was a Rabbit”(1)

 もっかイギリスでベストセラーになっている(アマゾンUKフィクション部門24位)、Sarah Winman の "When God Was a Rabbit" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。

When God Was a Rabbit

When God Was a Rabbit

[☆☆☆★★] 一連の奇跡的な出来事を通じて家族愛と友情のすばらしさを描いた心温まるヒューマン・ドラマ。が、このテーマが前面に出てくるのは第2部で、第1部はもっぱら、ドタバタ気味のコミカルなエピソードがつづく。幼い少女とその兄、親友を中心に、レズ、ゲイ、ロリコンなどきわどい話も混じるが、語り口はさらりとしたもので嫌味がなく、陽気なコメディーの一環とさえ言える。とにかくにぎやかで破天荒な面白さにあふれているが、じつはそれが後半の布石。次第に愛と友情のメッセージが読みとれるようになり、15年後の第2部はシリアス路線に一変。時に前半のコメディー・タッチも見られるものの、成人した娘は兄と親友をめぐる悲劇に巻きこまれる。テーマが収斂したぶん、話が四方八方に広がる「破天荒な面白さ」が影を潜めたのは残念だが、その喪失と復活のドラマはじつにハートウォーミング。少女にだけ人間の言葉を話すウサギの死と復活は、彼女の人生を予言・象徴するものだったのかもしれない。英語はごく標準的で読みやすい。