ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Helen Simonson の “Major Pettigrew's Last Stand” (2)

 レビューを書いたあとは、いつも翌日に落ち穂拾いの駄文を綴っているのだが、昨日は出勤日で大忙し。夜は夜で、ストレス発散のために一杯やったのでダウン。今日も午前中は「自宅残業」に追われ、補足を書くのがずいぶん遅くなってしまった。
 これは雑感でもふれたとおり、昨年の米アマゾン年間ベスト10小説に選ばれた作品で、今年の5月ごろ、ニューヨーク・タイムズ紙の Trade Paperback 部門のベストセラー・リストに載っていた。親しみのもてる表紙に惹かれて買い求めたが、今回の「見てくれ買い」は大当たり! 超多忙の毎日でなければ、一気にクイクイ読みすすんだはずだ。
 あえて重箱の隅をつつき、斜に構えてながめると、「人物像も、人間関係も、話の展開も、いや、愛のすばらしさというテーマさえも類型的」と言える。さらに突っこめば、「テーマ追求型の小説ではないので人生にかんする深い洞察」は「見受けられない」。
 だが、それがどうした、とぼくは言いたい。本書は、いくら「類型的」でも、「それがまったく気にならない」、工夫次第でいくらでも楽しい小説に仕上がる、という見本のような作品である。その工夫とは本書の場合、「ユーモアあふれる語り口と、ハートウォーミングな人間関係、小さなエピソードを積み重ねる構成の妙」。それから、何をさておいても、「チャーミングで、人間的にも誠実な」人物を主人公にすえていることだ。主人公が魅力的であること。これ、小説の基本でしょう。
 このところ、本の外では、とんでもなく忙しい現実が待っているだけに、これは今ふりかえっても、もっともっと読みつづけていたかったな。明日からまた仕事。ああ、早く隠居したい!