ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Half Blood Blues” 雑感 (2) とぼくの速読法

 今年の土曜は基本的に出勤日。ということは、ストレス発散日でもあるので、これから一杯やる予定。その前に昨日の続きを簡単に書いておこう。
 明日にはたぶん読みおえるはずなので粗筋はもう紹介できないが、この本、終盤にいたるも相変わらず快調だ。おそらく結末でもっと盛り上がるはずである。
 昨日から今日にかけて読んだ範囲でゴキゲンなのは、なんとルイ・アームストロングが登場し、本書の天才トランペッター、Hiero と競演するシーン。Hiero は、アームストロングに 'You perfect' と言われるのだからすごい。
 この音楽シーンの描写はじつにみごとだ。そもそも耳の奥にストレートに響いてくる音を文章で表現するというのは、ちょっと考えてもむずかしい。音楽評論家なら手馴れたものだろうが、そういうプロでも小説となるとまた勝手がちがうかもしれない。
 そんな文章を読むとき、いちいち意味を汲みとっていたのではまだるっこしい。まるでCDでも聴いているような感じで「読む」べきだろう。
 心理・情景描写にも同じことが言える。語彙レヴェルにもよるが、意味を考えるのではなく、登場人物とともに喜怒哀楽を感じとり、映画でも観るように風景を「読む」。じつはこれ、いつも実践しているわけではないが、ぼくの速読法です。このとき、頭の中で単語の音を出さないようにするのがコツでしょう。
 ただし、たとえばメルヴィルドストエフスキーあたりを速読しても意味がない。腰をすえてじっくり取り組むべき作品は、やはりカタツムリ君のほうがいいと思う。