ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Art of Fielding” 雑感 (5)

 体調は何とか回復したものの、仕事が相変わらず多忙をきわめ、この1週間もヘトヘト。電車の中で本書をひらくのだが、活字にさっぱり目がついて行かない。家に帰ってからはなおさらで、結局、まともに取り組んだのは昨日1日だけだった。いや、半日か。
 それでも、ようやく終幕近くにたどりついた。依然としてすばらしい出来ばえで、ぼくのように「ちょっとずつ読んでも面白い」のだから、「一気に読んだらなおさら面白いだろうなあ」と思う。
 もう粗筋は書けないが、ひとつだけネタをばらすと、試合中のある事件をきっかけにスランプにおちいった守備の天才、Henry は単なるスランプの域を超え、絶望の淵に沈んでいる。その絶望がタダゴトではない。ぼくは当初のノリから察して、Henry が友人なりガールフレンドなり、周囲の応援によってめでたく立ち直る熱血青春小説を予想していたのだが、どうもそれほど単純な展開ではなさそうだ。Henry が通っている大学の学長と Henry のチームメイト、Owen とのゲイ関係、同じくチームメイトで Henry の指南役、Mark と学長の娘 Pella の関係も風雲急を告げ、この先どうなるか予断を許さない。とはいえ、おそらくまだあと1週間は大忙しだろう。いやはや、「宮仕えの男はつらいよ」。
 ところで、ろくに本が読めないときでも音楽は聴ける。今や廃盤の、リヒテルインスブルック・ライブ盤「平均律」を同僚にコピーしてもらい、初めて聴いていたく感激。これを書いている今は、オタケンのブライトクランク盤「バイロイトの第9」に続き、ソロモン盤のモーツァルト23, 24番ピアノ協奏曲を聴いていた。こちらも初試聴だったが、どれもすばらしい! 音楽にヒーリング効果があるというのは本当ですね。