ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Art of Fielding” 雑感 (4)

 この1週間もブログをサボってしまった。過労のせいか風邪をひいてしまい、さりとて、職場が繁忙期ゆえ休みを取るわけにも行かず、毎日フラフラしながら仕事に励んでいた。唯一の救いは、ぼくの部署が過去最高の業績をあげたこと。今年は今まで胃の痛い思いをすることが多かったが、忘年会ではうまい酒が飲めそうだ。
 というわけで、Chad Harbach の "The Art of Fielding" は相変わらず、カタツムリ君のペースでしか読みすすんでいない。あちらでは、米アマゾンの年間ベストテンだけでなく、ニューヨーク・タイムズ紙の年間ベスト5や、Michiko Kakutani の推薦図書にも選ばれるなど評価は上がる一方。そんなニュースを聞くにつけ、早く読みおえたいのは山々だが、まだやっと後半に入ったところだ。
 今までの範囲をふりかえってみると、小説としての出来ばえは上記の評判どおり。日曜日ごとに読み継いでいるというのに、いざ取りかかるとクイクイ読める。その理由としてはまず、まさしくタイトルの the art of fielding が言い得て妙。いろいろな小説的要素のさばき方がじつにみごとである。
 本筋は野球小説だろう。大学チームの守備の天才 Henry は連続無失策試合を続けていたが、その後、試合中のある事件をきっかけにエラーを連発。自分を指導してくれているチームメイト、Mark とのあいだもギクシャクし、かなり落ちこんでいる。
 これに恋愛小説、青春小説、そして家庭小説の要素が複雑にからみあう。Mark と学長の娘 Pella の恋。同じくチームメイトの Owen と学長のホモ関係。Pella と、彼女を追いかけてきた夫の対立。メロドラマの色彩も強いが、なにしろ、それぞれの配合の仕方が非常に巧妙で、ちょっとずつ読んでも面白い。一気に読んだらなおさら面白いだろうなあ。