ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Family Fang” 雑感

 Kevin Wilson の "The Family Fang" に取りかかった。これは去年の7月だったか、米アマゾンの上半期ベスト10小説に選ばれているのを見かけ、イギリス版のペイパーバックを入手したまま積ん読。その後、米アマゾンでは年間ベストに残らなかったものの、アマゾンUKの小説部門とタイム誌のほうで選ばれている。
 今のところ、かなりおもしろい。といっても、2冊続けて読んだ文芸エンタメ路線のノリではなく、同じ英語で書かれているのにまるで異なる世界だ。それが新鮮な驚きを与える。やっぱり、いろんなジャンルを読んでみるものですな。
 ジャンルといえば、これはたぶんコメディー。もうすでに何度かクスクス笑ってしまった。主人公はタイトルどおり Fang 一家の4人で、夫妻がまず、公共の場でヘンテコなハプニング劇を演じてみせる。たとえば家族旅行で飛行機に乗ったとき、2人は未婚のカップルを装い、乗客の前で「男」が「女」に派手なプロポーズ。乗客たちはやんやの喝采を浴びせ、ぼくは笑いが止まらなかった。
 どのハプニング劇にも有名な文学作品のタイトルがついていて、上の話はスウィフトの『穏健なる提案』。ほかにも『罪と罰』や『ある貴婦人の肖像』、『イナゴの日』など、それぞれにちなんだイタズラが紹介される。が、夫妻によれば、それはイタズラではなく、れっきとした芸術である。この世にふさわしい混乱を引き起こし、世間一般の浅薄な価値観を白日のもとにさらすのがねらい、といった発言もあるが、真偽のほどは不明。とにかく愉快痛快だ。
 このハプニング劇に渋々つき合わされるのが2人の子供で、成長した子供たちの物語も平行して進む。姉の Annie はハリウッドの若手女優、弟の Buster は新進作家。この2人がまた、どちらもケッサクな騒動を起こし、じつはそっちのほうが本書の中心なのだが、今日はもう疲れた。このへんでおしまいにしよう。