たいへん遅まきながら、Jonas Jonasson の "The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared" を読了。いまや世界的なベストセラーで、去年のアマゾンUKの年間ベスト作品にも選ばれている。さっそくレビューを書いておこう。(後記:その後、本書は2013年、フェリックス・ハーングレン監督により映画化され、2014年には日本でも公開されました。邦題は『100歳の華麗なる冒険』)
[☆☆☆★★★] タイトルから期待されるとおり、冒頭から快調また快調。典型的な通勤快読本である。ストックホルム近郊の町の老人ホームに入っていた老人アランはまだまだ元気そのもの。窮屈なホームの生活に嫌気がさし、百歳の誕生パーティの直前に1階の窓から逃げだす。珍無類の冒険のはじまりだ。アランはひょんなことからギャングの一味につけねらわれ、また一方、警察も捜索を開始。この三者の視点にくわえ、アランの子ども時代からの出来ごとも年代記ふうに綴られるなど、変化に富んだ構成がうまい。彼の人生は20世紀の歴史そのもので、フランコ、トルーマン、スターリン、チャーチル、金日成、毛沢東、ド・ゴールなどと言葉をかわし、世界史の流れに影響を及ぼすという荒唐無稽な筋だてがケッサク。全篇を通じてユーモアあふれる筆致で、随所にコミカルな場面があり、とりわけ現代篇ではブラック気味のユーモアが冴える。終盤、過去と現在がいり混じったくだりはナンセンスのきわみ、まさに抱腹絶倒ものである。その後ボルテージがやや下がり、ワン・パターンも目だつようになったのは残念だが、とにかく陽気な酒好きの老人の珍道中と珍人生に、ブラボー!