たいへん遅まきながら、Jonas Jonasson の "The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared" を読了。いまや世界的なベストセラーで、去年のアマゾンUKの年間ベスト作品にも選ばれている。さっそくレビューを書いておこう。
[☆☆☆★★★] タイトルから期待されるとおり、冒頭から快調また快調。典型的な通勤快読本である。
ストックホルム近郊の町の老人ホームに入っていた老人がまだまだ元気そのもので、窮屈なホームの生活に嫌気がさし、百歳の誕生パー
ティーの直前に1階の窓から逃げ出す。珍無類の冒険のはじまりだ。老人は、ひょんなことからギャングの一味につけねらわれ、また一方、警察も捜索を開始。この3つの視点にくわえ、老人の子供時代からの出来事も
年代記風に綴られるなど、変化に富んだ構成がうまい。老人の人生は20世紀の歴史そのもので、
フランコ、
トルーマン、
スターリン、
チャーチル、
金日成、
毛沢東、
ド・ゴールなどと言葉をかわし、世界史の流れに影響を及ぼすという荒唐無稽な筋立てがケッサクだ。全編を通じてユーモアあふれる筆致で、随所にコミカルな場面があり、とりわけ現代編ではブラック気味のユーモアが冴える。終盤、過去と現在が入り混じるくだりはナンセンスの極み、まさに抱腹絶倒ものである。その後ボルテージがやや下がり、ワン・パターンも目だつようになったのが残念だが、陽気な酒好きの老人の珍道中と珍人生、ブラボー!
スウェーデン語からの英訳ということで、英語は平易で読みやすい。