ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Umbrella” 雑感と Aharon Appelfeld の “Blooms of Darkness” (2)

 今日はまず、1冊だけ読みのこしている今年のブッカー賞最終候補作、Will Self の "Umbrella" について思ったことから書いておこう。冒頭を少しだけ拾い読みしてみたが、パラパラやったときの印象どおり、かなりの難物である。意識の流れの技法が多用されているのが一因で、語彙レヴェルも高い。あちらのサイトをのぞいてみると、native でも読破するのにけっこう時間がかかっているようだ(http://mookseandgripes.hotblack3.myfreeforum.org/2012_Shortlist_Umbrella_about376.html?sid=eccbe1b6e326e5d48bb49d3760fa2304)。アマゾンUKのレビュアーの中には、なんと4ページで投げ出してしまった読者さえいる。
 というわけで、これは取り組むにしても相当覚悟が必要な本だろう。費やしただけの努力と時間が報われる作品ならいいのだが、わずかに読んだ範囲の感触としては、凝った技巧や表現はさておき、テーマ的にどうなのかなあ、という気がしなくもない。ただ、上のサイトやアマゾンUKでも、最後まで読みとおした人はかなり高く評価しているようだ。
 ちなみに、各社のオッズをまとめた Nicerodds. co. uk によると、"Bring up the Bodies" とならんで1番人気を争っている。今年のショートリストは同書のように伝統的な作品と、"Umbrella" のように実験的な小説に分かれ、その対立の構図がオッズにも反映されているのがおもしろい。
 ……と、あれこれ考えた末、宮仕えのぼくが1週間で読破するのは、よほど波長が合わないかぎり無理だろうという結論に達した。賞の発表はまだ先なので、気が向いたら本格的に取り組んでみよう。
 そこで、"Umbrella" の代わりに読みはじめたのが当初の予定どおり、この "Blooms of Darkness" というわけである。「当初の予定」とは、今年ひさしぶりに再開した〈世界文学の夏〉シリーズのイスラエル編として、かなり前から頭にあったものだ。このところの雨でめっきり涼しくなり、夏ももうおしまい。〈世界文学の旅〉に変更だ。
 恥ずかしながら、イスラエル文学に接するのはこれが初めてで、Aharon Appelfeld がどんな作家なのか、ほかにどんな作家がいるのかはまったく知らない。あ、そういえば、7月に読んだ今年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Nathan Englander の "What We Talk about When We Talk about Anne Frank" にイスラエルの話が出てきましたな。
 ……などと駄文を綴っているうちにもう疲れてきた。"Umbrella" の話がメインで、看板に偽りありとなってしまったが、今日はこれにて失礼。(後記:「看板に偽り」が気になり、「"Umbrella" 雑感」と書き加えました)