今年のアレックス賞受賞作のひとつ、Robin Sloan の "Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore" をボチボチ読んでいる。
アレックス賞といえば、ぼくは例年、発表時点でペイパーバック版が出ているものしか読まないことが多い。仮におもしろそうだなと思ったハードカバーがあるとしても、いつかペイパーバック化されるだろうと期待しているうちに忘れてしまう。それゆえ、いつもせいぜい4作くらいしかカバーしていないはずだ。
ところが、この "Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore" は、まだハードカバーしか出ていないのに、どうしても読みたくなった。理由は単純だ。タイトルがとてもいいからである。本好きの人ならだれでもきっと、え、どんな話だろうと興味をもつにちがいない。
その興味を削がない程度に紹介すると、舞台は現代のサンフランシスコ。主人公の青年 Clay が Mr. Penumbra の書店で夜勤の店員として働くようになる。そこはヘンテコな本屋で、入り口付近にはふつうの本がおいてあるのだが、奥は異様に狭く、三階ほどの高さまで書棚があり、そこに聞いたこともないようなフシギな本がぎっしり並んでいる。客はほとんど来ない。が、真夜中にたまにやって来る客がいて、彼らはなんと本を返し、奥の書棚にあるべつの本を借りて行く。つまり、この店は実質的には図書館なのだ。
ここまで読んだら、もう夢中になっているはずだ。自分が行ったことのある本屋で、似たような間取りの店はなかったっけ、などと思ったりもするだろう。ぼくがまっ先に思い出したのは本屋ではなく、天沢退二郎の『光車よ、まわれ!』に出てくる夜の図書館。あれはほんとうに蠱惑的な図書館でしたね。そう、この "Mr. Penumbra's 24-Hour Bookstore" もファンタジーというかフェアリーテイルというか、幻想的な要素の濃い作品のようである。が、それだけではなく……。きょうはこれくらいにしておこう。