ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Beryl Bainbridge の “Master Georgie” (1)

 1998年のブッカー賞最終候補作、Beryl Bainbridge の "Master Georgie" を読了。さっそくレビューを書いておこう。

[☆☆☆★★] ベインブリッジ十八番のブラック・ユーモアが遺憾なく発揮されたドタバタ喜劇。売春婦相手に腹上死した父親の死体を、息子の医学生ジョージーが自宅の寝室に運びこみ……という開幕からしてケッサクだ。トラの皮の敷物にびっくりして転んだ女が流産。架空の婚約をめぐる決闘騒ぎ。などなどコミカルなエピソードや、ユーモラスな会話が随所に盛りこまれ、よくまあヘンテコな物語を思いついたものだと感心させられる。後半、ジョージーが軍医としてクリミア戦争に従軍してからは悲惨な戦場のようすも描かれるが、銃弾の飛びかうなか、おさわりシーンがあったかと思うと、つぎにはグロテスクな死体がごろごろ。まさにエログロナンセンスのきわみというしかない。これを書いたのが女流作家なのだから、イギリスとはまことにケッタイな国である。