ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Life After Life” 雑感 (2)

 差し障りのない程度にすこしずつ内容をまとめておこう。まず、序盤は目まぐるしく時間と場所が変化する。このフラッシュバックの多用にどんな効果があるのか、ぼくにはどうもピンとこない。それどころか、煩わしく思えることもあるほどで、これがクイクイ度(クイクイ読める度合い)の落ちる一因となっている。
 冒頭は1930年のミュンヘン。Ursula という女がカフェで、ある男に発砲する。女は男にドイツ語で 'Führer' と呼びかけているので、男はもしかしたらヒトラーかもしれない。のちに、やっぱりそうだったのかと思える箇所も出てくるが、いまのところ、この場面に戻ることはないので断定はできない。
 ついで1910年、場所はのちにイギリスの小さな村とわかるが、ここで赤ん坊が誕生……と思ったら、The little heart. A helpless little heart beating wildly. Stopped suddenly like a bird dropped from the sky. A single shot. / Darkness fell. (p.18) とあるので、フムフム、死産だったのかとメモ。
 ところが、次の章になると、赤ん坊は息を吹き返している。駆けつけた医師の応急処置で間一髪セーフ。ほんまかいな。ともあれ、この赤ん坊が上の Ursula であることがわかる。
 やがて1914年、Ursula は母親に連れられコーンウォールの海岸に。そこで母親が目を離したすきに、姉ともども波打ち際で遊んでいた Ursula は大波にさらわれる。No one came. And there was only water. Water and more water. Her helpless little heart was beating wildly, a bird trapped in her chest. A thousand bees buzzed in the curled pearl of her ear. No breath. A drowning child, a bird dropped from the sky. / Darkness fell. (p.38) ああ、一巻のおしまいか!
 と思ったら、いったん1910年に戻った次の章で、Ursula はなんと、たまたま海辺で絵を描いていた男に助けられ、一命をとりとめている。ただフシギなことに、人工呼吸やら何やら大騒ぎしたようすがまったくない。The girls were sopping wet and tearful. 'Went out a bit too far,' the man said. 'But they'll be fine.' (p.46) なんのこっちゃい?
 ざっとこんな調子で、読めば読むほど、常識では考えられないようなフシギなことが起こる。それがまあ、おもしろいと言えばおもしろいのだが、へそ曲がりのぼくは、こういうミステリアスな設定に、はたして必然性があるのかどうか疑いはじめている。これまたクイクイ度の落ちる一因だ。